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古書流通と不法ダウンロード、電子書籍などに関する考察

昨日Twitterで、「漫画家が飢えて死ぬか、読者が飢えて死ぬか。」という論争が起こっているのを見かけた。Togetterにまとめられていたので、一通り目を通すことにした。

この二つを読んだ上で、古書流通や不法ダウンロード、電子書籍や新たなマネタイズ手法について、私が感じていることを思いつくまま、つらつらとつぶやいてみた。2時間くらいかけてつぶやいたが、リプライもリツイートもゼロだった。

あまりにも寂しかったので、自分でTogetterにまとめてみた。投稿したのは3月1日22時43分だが、現時点(3月2日18時40分)で3135view、お気に入りに入れてもらった件数が27と、思ってた以上に読まれてびっくり。コメントも何人かに頂いている。やはりこういった長文は、膨大なタイムラインの流れの中で埋もれていってしまう可能性が高いのかもしれない。せっかくなので、自分がコメントとして追加した分も含め、再編集してこちらにも掲載する。

なお下記の内容は、発端は漫画家のつぶやきだが、小説やゲームなど、デジタル化が可能なコンテンツ全てに当てはまることだと思う。


発端になった新條まゆさん( @shinjomayu )のツイートは違法ダウンロードに対する問題提起だったのに、途中から古書流通の話が混在してややこしくなった。この2つは別問題だと思う。

中古車業界にいたからよく判るが、中古物品の流通量は新品の流通量より多い。メーカーがそれを是としているのは、経年劣化するので中古の流通には限界があるということと、2つのメリットがあるからだ。

  1. 「下取」や「買取」のリセールバリューで新品の販売を促進することができる。つまり、古本として売ったお金は、新刊の購入に充てられる可能性がある。中古で高く売ることができれば、それだけ新品の売れる可能性は高くなる。
  2. 新品には手が届かないユーザーが中古を購入することで、ファンの裾野を広げられる。次のシリーズを、新品で買ってもらえる可能性が出てくる。

本は黄ばんだり汚れたり破れたりと劣化するし、運ぶコストや置き場もとる。それが従来の流通の前提だった。しかし、デジタル化された情報は劣化しないし、コピーにコストがかからないからどこまでも広がっていってしまう。だから、古書流通と「zipでうp」は、全く次元の異なる問題だ。

中古物品の場合は、メーカーは「それでも新品が売れればいい」と割り切る事ができる。しかしデジタル情報の場合、劣化しないコピーが無料で拡散してしまうので対価が極小化する。これは任天堂DSのマジコン問題が判りやすい。新品を買ってデータをコピーし即座に中古として売る行為が頻発することで、ゲームはどんどん売れなくなっている。中古相場もあっという間に下落していく。「コピーできない仕組み」の中でしか従来型の流通はありえないが、その仕組みを破ってコピーする行為は必ず再発する。

情報革命によって、従来型の流通は壊れ始めている。代替として考えられている電子書籍は、現状大半が「コピーできない仕組み」の中で従来型の流通市場を作ろうとしている。これは消費者の立場で考えると、電子書籍は中古としてリセールできないというデメリットがある。つまり、中古流通が新品販売に与えてきたメリットが2つとも消えてしまうのだ。

今後とも不法コピーや違法ダウンロードは無くならないし、従来型の市場流通は確実に減っていく。これを大前提にして、新しいマネタイズの手法を生み出していくしかないと思う。このあたりの問題に直面している人は、クリス・アンダーソンの「フリー」は絶対読んでおくべきだと思う(今更ですが)

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ちなみに私はこの「フリー」に書かれていることは極論だと思っていて、媒体の特性が異なるため情報革命後においても紙に一定の需要は残ると考えている。TVがこれだけ普及してもラジオがまだ生き残っているように、紙媒体が消滅することはない。ただ、従来の手法で得られる対価は確実に小さくなっていく。今までのやり方に固執したら生き残っていけないのは確実だ。

ところで、私が以前在職していた会社では「売上第一」ではなく「お客様の満足の結果対価を得る」ことが大切だと言われていた。著者にとっても、まず大切なのは「読者に喜んでもらうこと」だ。今まではそこから先は仕組みが出来上がっていて、著作者が儲ける方法なんて考えなくてもよかった。しかし、今やその対価を得る仕組みが壊れ始めている。対価が得られなければただの趣味。それは「プロ」じゃない。今後は、従来の仕組みが壊されたことを嘆いたり批判したりするより、儲ける方法「も」考えた方が建設的だ。

従来型の流通が壊れることで、著者・編集・校閲・デザイン・印刷・製本・取次・運送・書店・広告宣伝などの役割も変わっていく。少なくとも、印刷~書店の役割は確実に小さくなる。古書ビジネスも例外ではない。

カーディーラーは、昔は中古車をオークションでの流通相場よりかなり安く下取していた。そこで、オークション流通相場に基づく買取という新しいビジネスモデルが生まれた。ヤフオクのような個人間売買手法の発達で、手間ひまを惜しまなければ古本屋に叩き売るより高く売れる可能性が出てきた。また、相場の見える化によって、人気書籍は古本屋に流通しなくなる。昔のように、古本を全部まとめて二束三文で買い叩くというビジネススタイルは、今後は難しい。

少し待てば新品同然のモノが安く手に入るなら、中古の購入に流れる消費者は多くなる。逆に言うと、買ったモノの価値が簡単に下落しないことは、新品の販売を促進する要因となる。つまり、健全な中古市場が形成されることは、新品販売にとっても良いことなのだ。当然のことながら、「読者に喜んでもらうこと」ができない書籍は中古相場がすぐに下がってしまう。中古相場は市場の評価によって決まるからだ。

ところが、電子書籍に中古市場は形成されない。つまり、リセールバリューは必ずゼロになる。その分、安価でなければ売れないのは間違いないだろう。印刷・製本・取次・運送などのコストがかからない、という売り手側だけの理由で価格設定を考えてはダメだ。ニーズと価格が合致しなければ売れない。

では今後どうしていけばいいのだろうか。マンガで言えば、赤松健さんが始めたJコミ(絶版+無料配布+広告)は非常に面白いモデルだ。希有馬さんが始めた、プロが同人誌(Webコミック →セルフプロデュースによる書籍化)という中抜きもアリだと思う。今や音楽CD販売はメジャーレーベルよりインディーズの方が儲かるらしいので、マンガも今後は同人流通が主体になってくるかもしれない。

「寄付」という手法もある。ろじっくぱらだいすのワタナベさんが提唱したWeb投げ銭や、Wikipediaが有名だ。フリージャーナリストで、Paypalなどを使って寄付を募っている人もいる。こういった寄付行為が手間をかけずにできるようになり、「当たり前のこと」として認識されるようになってくれば、ニコニコ動画で素晴らしい動画に付く「振り込めない詐欺」のタグは消えるだろう。

少し本題とはズレるが、従来型の流通手法の延長としてよく見かける「おまけ戦略」は一考の余地があると思う。例えば「侵略!イカ娘」第3巻のBDは、初回限定特典で付いてくるミニイカ娘ちゃん欲しさに複数購入するツワモノもいるようで、うまく販促に繋がって いるように見える。

しかし仮に、ミニイカ娘ちゃんを単独で販売すれば、爆発的に売れる可能性もあったわけだ。これだけ人気があるのだから、おまけじゃもったいなかった。1体500円くらいだったら、1人で100体くらい買って「部屋が侵略されたぁあああ!」って喜ぶ方々って結構いるのではないだろうか。しかし、既に初回限定特典としておまけしてしまったので、今から単独販売なんかしたらBDを複数購入してくれたコアなファンを確実に怒らせてしまう。惜しいことをしたと思う。

結論イカちゃんかよ!

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